昨年改訂、出版した拙著『読書の歴史を問う』で、内田魯庵「破垣」について「この小説が、「風俗壊乱」の理由によるのか、「安寧秩序妨害」の理由によるのかは、今もってはっきりしない。」(153頁)とあるが、当時の「官報」に「風俗ヲ壊乱スルモノト認メ」とある。
発禁資料を調べる際、まず「検閲」と「調べ方」という二つの言葉で検索をかけることをすすめている。現在では国立国会図書館のリサーチナビに容易にたどり着き、よくできているサイトなので説明が大幅に省ける。
戦前期の検閲の場合、今ではリサーチナビで以下のように説明がある。
4-1発禁処分の事実関係を調べられる文献
官報(大蔵省印刷局[編])
1888年11月から1910年6月まで、「出版物発売頒布禁止」の告示を掲載しています。
現在では「官報」電子資料へのリンクまではられており、参照も容易。
「破垣」は『文芸倶楽部』の1901年1月号なので1月の官報を見ると7日の官報、「司法及警察」の「発売頒布停止」の項目に「風俗ヲ壊乱スルモノト認メ」とある。
この作品については昨年刊行された日比嘉高氏『プライヴァシーの誕生』(新曜社、2020年)でも扱われており、ちゃんとこの資料が引かれている。
拙著は昨年改訂版を出したものの、この部分が以前のままで誤っているので訂正したい。