2022年2月4日金曜日

新刊『「大東亜」の読書編成』刊行

  拙著『「大東亜」の読書編成 思想戦と日本語書物の流通』の見本が届きました。書店での販売は来週から。

 この本にまとまった調査は2013年から始めているので、10年近く取り組んでいたことになります。当初の構想とはだいぶ違った形になりました。それをうれしくも思っています。それはつまり調査して出会った資料や見つかったことが、自分の予想や想像を越えていたこと、そして自分の構想そのものがそれによってかわっていったからです。

 研究をしていて私が楽しいのは、それが想像通りになることではなくて、自身の想像の仕方をかえてくれるからです。そうした楽しさを、一人でも多くの方と共有できれば幸いです。


目次詳細は以下の通り。

序章 〈日本〉を発信する
はじめに
1 文化外交論の〈日本〉志向 国際文化局のゆくえ
2 内への統制、外への宣伝
3 日本文化会館蔵書と文化工作
4 技術としての学知

第一部 国内の文化統制から対外文化工作へ
第一章 再編される学知とその広がりー戦時下の国文学研究から
はじめに
1 教学刷新下の国文学研究
2 早稲田大学における国文学研究
3 戦時教育の中の国文学
4 抗いの多層性
おわりに

第二章 読書の統制と指導ー読書傾向調査の時代
はじめに
1 読書傾向調査というトレンド
2 「自由読書」はなぜ批判されるのか
3 読書傾向調査の系譜
4 読書傾向調査から読書指導へ
5 読書会と『読書日録』
おわりに

第三章 「東亜文化圏」という思想ー文化工作の現場から
はじめに
1 日本語教育と文化圏の創造
2 地政学の受容とその実践
3 内地と現地実践との溝
4 現地実践の行方
おわりに 代償として「青年」

第二部 外地日本語蔵書から文化工作をとらえる
第四章 アジアをめぐる日仏の文化工作ーベトナムに遺された日本語資料
はじめに
1 東南アジアの日本語蔵書
2 フランス極東学院の日本研究
3 日仏文化交流と文化工作
4 ハノイ日本文化会館の行方
おわりに

第五章 日本を中心とした東南アジア研究へーハノイ日本文化会館蔵書から
はじめに
1 「大東亜学」の構想
2 日本語蔵書の構成
3 誰がアジアを記述するのか
おわりに

第六章 戦時下インドネシアにおける日本語文庫構築
はじめに
1 戦前インドネシアの日本語読者
2 占領下の日本の文化工作
3 日本語文庫の構築
4 岡倉天心という理想
5 日本語蔵書の構成
おわりに

第七章 文化工作と物語
はじめに
1 講談ジャンルの活用
2 講談と偉人伝の間
3 講談の方法と教育 
4 戦時下の山田長政表象 
5 山田長政 伝記小説の構造 
おわりに

第三部 流通への遠い道のり
第八章 戦時期の日系人移民地の読書空間ー日本語出版情報誌から
はじめに
1 一九三〇年代ブラジルの日本語読者
2 出版情報誌『文化』の創刊
3 日本の書物の広がりと享受
4 田村俊子「侮蔑」と遠隔地読者の邂逅
おわりに 『文化』の境界性と可能性

第九章 戦争表象を引き継ぐー『城壁』の描く南京大虐殺事件
はじめに
1 『城壁』執筆まで
2 記憶の継承と改変
3 引揚げ体験という靱帯
4 流通しない「南京事件」物語
おわりに

終章 書物の流れを追いかけて
1 書物の広がりから問えること
2 東南アジア各国の戦前日本語資料
3 書物の広がりのその先に

2022年2月1日火曜日

『リテラシー史研究』15号を刊行

  『リテラシー史研究』15号を刊行。この号には私は「大学図書館からうかがえる戦中・占領期の図書没収 『戦時期早稲田大学学生読書調査報告書』刊行補遺」を執筆。早稲田大学図書館の業務文書の調査で見つかった戦時中の図書館の「閲覧禁示図書」リスト、「図書館報告書」や、占領期に文部省から大学に出された「宣伝用刊行物の没収について」等の資料を紹介している。


目次は以下の通り。

須山智裕 慶應義塾図書館蔵・関東軍慰問雑誌『満洲良男』より

和田敦彦 大学図書館文書からうかがえる戦中・占領期の図書没収

 ―『戦時期早稲田大学学生読書調査報告書』刊行補遺―

読書史料調査グループ 戦時期早稲田大学図書館業務文書細目

リテラシー史研究会 ベトナム社会科学院所蔵日本語資料(旧フランス極東学院所蔵資料) ―目録データの補正―

田中祐介 個人文書の研究から「書くことの歴史」を展望する

 ―『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』刊行に際して-