9月に書類不備で延期したシンガポールでの調査をようやく実施。感染症の広がりで海外での調査がずっとできなかったが、3年ぶりの海外で、感慨深い。といってもまだ街中では日本と同じくみなマスクを着用。訪問先での会議もあるので、感染症を警戒して外食はせず、買ってきた食材やホテル内で食事はすますようにしていた。初日が国立図書館、二日目には東南アジア研究所で、午前は調査、昼は会食、その後、調査をもとに資料についての話し合い。
三日目には午前に国立図書館側との会合を行い、午後は資料調査を継続して行った。
9月に書類不備で延期したシンガポールでの調査をようやく実施。感染症の広がりで海外での調査がずっとできなかったが、3年ぶりの海外で、感慨深い。といってもまだ街中では日本と同じくみなマスクを着用。訪問先での会議もあるので、感染症を警戒して外食はせず、買ってきた食材やホテル内で食事はすますようにしていた。初日が国立図書館、二日目には東南アジア研究所で、午前は調査、昼は会食、その後、調査をもとに資料についての話し合い。
三日目には午前に国立図書館側との会合を行い、午後は資料調査を継続して行った。
3月に続いて、10月1日から3日にかけ安積歴史博物館での今年二回目の調査。参加者間で県内の図書館、文学館などにも足をのばしたいと話していたが、今回は中山義秀文学館に調べに行ってくれた参加者も。初回は三日目に大量の学校文書の所蔵が追加で見つかったが、今回は今回で明治からの洋装本が博物館ではなく安積高校の図書館書庫に保管されていたことが判明。ただ、図書館の改築にともない、その書庫で保管できるのは年内限りということ。なんとかそれらの資料を継続的に保管できないか博物館とも話し合った。
シンガポールの国立図書館と、東南アジア研究所と連絡をとり、9月にそれぞれの機関との会合と訪問調査を設定していたが、出国当日、空港で書類不備で行けなくなってしまった。海外渡航の場合、パスポートが有効であるだけではなく、6ヶ月、あるいは1年といった必要な有効期間が国ごとに定められている。シンガポールの場合は半年。
しばらく海外旅行をしていなかったため、パスポートの有効期間確認を怠っていた。出国当日、有効期間はもう1ヶ月をきってしまっていたのでどうしようもなく、すべてキャンセル。パスポートを更新し、あらためて12月に調査日程を動かし、再度調整をすることに。
『職業作家の生活と出版環境』刊行の際、榛葉英治の資料について、榛葉家より掛川図書館に寄贈した資料についての情報を頂いた。刊行前は時間に余裕がなかったため、私一人で調査に訪問したが、できれば執筆者でゆっくり時間をとって見に行く機会を作りたいと話していた。この日、執筆者のうちで都合のついた4人で資料調査に。
早稲田大学図書館に欠けていた日記と、また、生前にテレビ放映された榛葉英治の出演番組などが保管されていた。「動く」榛葉英治とその「声」に接するにははじめて。
神奈川大学人文学研究所のシンポジウム「教室の中の文学 明治・大正期を中心に」に参加。実際にどういう出版物や作品が児童の間にひろがっていたのかを検討しようという試み。調査や研究会で一緒に活動してきた方々もパネリストとして参加しており、楽しみにしていた企画。
昨年、読書傾向調査に関する資料の復刻に関わって以降、戦前、戦中の読書指導や読書調査に関心を向けた調査を継続。拙著でも扱ったこともあって、関心をもってくれる方も多く、調査がこれから大きく展開してゆけそうになってきた。
特に公共図書館の業務資料がとても調査に有用なので、資料の所蔵情報を提供頂いていた長野県内の図書館を訪問し、調査の打ち合わせを行った。
具体的には、伊那創造館、それと長野県立図書館と話合いをもって、所蔵されている業務文書の調査、目録化に取り組みこととなった。
伊那創造館は旧上伊那図書館の文書が豊富に遺されており、県立図書館にもまた特色ある戦前、戦中の業務文書が遺されていた。
榛葉英治氏の日記をもとにした研究書を刊行するにあたって、著作権者にあたるご子息の光記氏と連絡をとり、許諾を頂いた。それが機会となって、光記氏の娘さんにあたる榛葉夏江さん、そして光記氏の弟にあたる春夫さんから話をうかがう機会を作ることができた。『職業作家の生活と出版環境』の執筆者、編集者で対面とオンラインで集まり、話をうかがった。日記からはうかがえない家族からの情報がとても新鮮。
リテラシー史研究会を開催。今回は、5月の安積歴史博物館での現地調査をもとに、今後の調査の仕方や書誌のとりかたについての問題点の洗い出しを行った。次回の調査は秋に予定。それまでに入力したデータに、撮影した蔵書印、管理印などの来歴情報を加えていくことになっている。一冊でもかなりの種類の印がみられるので、それなりの手間がかかりそう。
教育総合研究所の講演会を開催。前回はオンライン開催だったのだが、今回からハイフレックスでの開催。特に問題なくスムーズに進行。テーマは「大学入試、どう変わるか 新学習指導要領 × 大学入学者選抜」で。私の場合、国語領域のことはそれなりに情報としても知ってはいたものの、理科や社会での入試問題の争点が聞けたこと、そしてそれが国語領域の問題を考えるうえでも色々な示唆を与えてくれたことが大きかった。また大学入試改革を歴史的に俯瞰する視点もとても参考になった。
3月に試行的に調査しておいた郡山の安積歴史博物館での調査が本格的にはじまった。土曜から月曜の3日間を使い、旧制安積中学校資料の整理、調査を行った。いろいろな大学から研究者や院生の方が13名参加。3月に試行的な調査を行ったが、今回が本格的な初回調査となる。調査中に別置してある戦前の学校文書が大量に見つかり、かなり長い調査になることが予想される。旧制中学校の蔵書や学校資料がこれだけまとまった形で調査できる場所はとても貴重なので、所蔵機関と協力しながらうまくこれらを生かしていきたい。
明治学院大学に寄贈された占領期の資料、出版物についての会議と調査。受け入れの際の目録情報をもとに、具体的にどういった資料がどういう状態にあるかを確認するとともに、これからどういう形でその調査を進めていけるのかを所蔵機関と話し合った。これまで一緒に調査をしてきたメンバーの中に、ちょうど同大学の教員もおり、この調査も一緒にやっていけると理想的。とりあえず作業の仕方や人数、これからの計画などを検討。資料は占領期の出版物、図書や雑誌と、映画や音楽などのパンフレット類も多い。
拙著『「大東亜」の読書編成』で、シンガポール国立図書館に寄贈されていた日本語資料、江川コレクションについてふれているが、寄贈者の江川氏と懇談する機会を頂いた。日本工業倶楽部で氏から寄贈についての次第を詳しくうかがうとともに、これ以外に氏が国内外に寄贈した各地の資料についての情報を提供してもらえた。このうち、いまだ十分に調査がなされていない資料もあるため、今後それらの資料について調査していくこととし、氏からも協力して頂くこととなった。
具体的には、シンガポール国立図書館以外に、シンガポールの東南アジア研究所、そして明治学院大学への寄贈資料について、調査を進めていくこととした。氏を通して、これら機関の責任者と連絡がスムーズに行えることとなった。月末にはさっそく明治学大学図書館と打ち合わせをし、寄贈されていた日本占領期の文化資料群の調査の手順について話し合うこととした。
卒業記念にゼミ生に渡そうとオンラインでおこなった卒業論文報告会の動画をもとにDVDを作成。報告会の動画に短いメッセージを添えて約2時間ほど。オンライン授業のツールが普及して、こうした記録が容易に作成、活用できるようになった。
拙著『「大東亜」の読書編成 思想戦と日本語書物の流通』の見本が届きました。書店での販売は来週から。
この本にまとまった調査は2013年から始めているので、10年近く取り組んでいたことになります。当初の構想とはだいぶ違った形になりました。それをうれしくも思っています。それはつまり調査して出会った資料や見つかったことが、自分の予想や想像を越えていたこと、そして自分の構想そのものがそれによってかわっていったからです。
研究をしていて私が楽しいのは、それが想像通りになることではなくて、自身の想像の仕方をかえてくれるからです。そうした楽しさを、一人でも多くの方と共有できれば幸いです。
目次詳細は以下の通り。
序章 〈日本〉を発信する
はじめに
1 文化外交論の〈日本〉志向 国際文化局のゆくえ
2 内への統制、外への宣伝
3 日本文化会館蔵書と文化工作
4 技術としての学知
第一部 国内の文化統制から対外文化工作へ
第一章 再編される学知とその広がりー戦時下の国文学研究から
はじめに
1 教学刷新下の国文学研究
2 早稲田大学における国文学研究
3 戦時教育の中の国文学
4 抗いの多層性
おわりに
第二章 読書の統制と指導ー読書傾向調査の時代
はじめに
1 読書傾向調査というトレンド
2 「自由読書」はなぜ批判されるのか
3 読書傾向調査の系譜
4 読書傾向調査から読書指導へ
5 読書会と『読書日録』
おわりに
第三章 「東亜文化圏」という思想ー文化工作の現場から
はじめに
1 日本語教育と文化圏の創造
2 地政学の受容とその実践
3 内地と現地実践との溝
4 現地実践の行方
おわりに 代償として「青年」
第二部 外地日本語蔵書から文化工作をとらえる
第四章 アジアをめぐる日仏の文化工作ーベトナムに遺された日本語資料
はじめに
1 東南アジアの日本語蔵書
2 フランス極東学院の日本研究
3 日仏文化交流と文化工作
4 ハノイ日本文化会館の行方
おわりに
第五章 日本を中心とした東南アジア研究へーハノイ日本文化会館蔵書から
はじめに
1 「大東亜学」の構想
2 日本語蔵書の構成
3 誰がアジアを記述するのか
おわりに
第六章 戦時下インドネシアにおける日本語文庫構築
はじめに
1 戦前インドネシアの日本語読者
2 占領下の日本の文化工作
3 日本語文庫の構築
4 岡倉天心という理想
5 日本語蔵書の構成
おわりに
第七章 文化工作と物語
はじめに
1 講談ジャンルの活用
2 講談と偉人伝の間
3 講談の方法と教育
4 戦時下の山田長政表象
5 山田長政 伝記小説の構造
おわりに
第三部 流通への遠い道のり
第八章 戦時期の日系人移民地の読書空間ー日本語出版情報誌から
はじめに
1 一九三〇年代ブラジルの日本語読者
2 出版情報誌『文化』の創刊
3 日本の書物の広がりと享受
4 田村俊子「侮蔑」と遠隔地読者の邂逅
おわりに 『文化』の境界性と可能性
第九章 戦争表象を引き継ぐー『城壁』の描く南京大虐殺事件
はじめに
1 『城壁』執筆まで
2 記憶の継承と改変
3 引揚げ体験という靱帯
4 流通しない「南京事件」物語
おわりに
終章 書物の流れを追いかけて
1 書物の広がりから問えること
2 東南アジア各国の戦前日本語資料
3 書物の広がりのその先に
『リテラシー史研究』15号を刊行。この号には私は「大学図書館からうかがえる戦中・占領期の図書没収 『戦時期早稲田大学学生読書調査報告書』刊行補遺」を執筆。早稲田大学図書館の業務文書の調査で見つかった戦時中の図書館の「閲覧禁示図書」リスト、「図書館報告書」や、占領期に文部省から大学に出された「宣伝用刊行物の没収について」等の資料を紹介している。
目次は以下の通り。
須山智裕 慶應義塾図書館蔵・関東軍慰問雑誌『満洲良男』より
和田敦彦 大学図書館文書からうかがえる戦中・占領期の図書没収
―『戦時期早稲田大学学生読書調査報告書』刊行補遺―
読書史料調査グループ 戦時期早稲田大学図書館業務文書細目
リテラシー史研究会 ベトナム社会科学院所蔵日本語資料(旧フランス極東学院所蔵資料) ―目録データの補正―
田中祐介 個人文書の研究から「書くことの歴史」を展望する
―『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』刊行に際して-
22日は、午前、午後ともにオンラインでの講演会。午前は20世紀メディア研究所の研究会。
「日系アメリカ人隔離収容所ツーレ・レイク(鶴嶺湖):帰米ジャーナリスト清水巌の手記とインタビューから」(上田薫・ヒロシ・シミズ)
「日系アメリカ人に関するマス・メディア、ジャーナリズム研究―これまでの主要な成果と今後の課題」(水野剛也)
時差の関係もあって午前中に。ツールレイク収容所での経験が直接うかがえる貴重な講演会だった。
午後は教育総合研究所の公開研究発表会。教育総合研究所で採択されている公募研究の成果発表で、2時から3時間近く、14の部会から発表がなされた。時間は長いが、それぞれの部会は10分で分かりやすくまとめてくれるため、多彩な知見が一挙に得られる。領域も教育に関わる広範な領域に及んでいるので、個人的にはとても楽しい発表会。
昨年暮れから大学院のゼミは次年度からのこともあるのでハイフレックスにし、基本的には教室で行うものの、オンラインでも同時に参加できるようにした。
あわせて、リテラシー史研究会も同様ハイフレックスに。とはいえ、オミクロン株による感染症の急拡大で、15日の研究回は大学に来たのは私ともう一人、あとはオンライン参加となった。榛葉英治日記の調査、研究は今回が最後。その研究をもとにした研究書の入稿も無事終わり、この日は編集者にも参加してもらった。刊行までの打ち合わせや、次の調査についての意見交換などを行った。